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ブルー・オーシャンの見つけ方 ~本当に成果を出すロングテールSEOの実務手順

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この記事を読むのにかかる時間: 約 6.5

―何を解析すればいいのかわからないあなたに―

Webサイトの“見える化”&“カイゼン”講座【実践編】

第3回 「ブルー・オーシャン」の見つけ方 〜 本当のロングテールSEOの“実務”とは

データの見方とそこからのサイト改善方法を具体的に考える「ウェブサイトの見える化&カイゼン講座【実践編】」。第3回は「ブルー・オーシャン」という考え方からSEOの方法について探ったが、今回はいよいよ、ブルー・オーシャン発見の具体的な手順を検討していこう。

顧客の顔を見ながら、役立つシーンを描いているか?

1つの企業は多くの種類の顧客を集めなければならない。商品にはそれぞれ特徴があるのだから、それぞれに違う顧客を必要としている。たとえばまったく同じ味のポテトチップスであっても、普通の袋に入れて売るのと、大袋に入れて「業務用」として売るのでは、顧客がまったく違ってくる。

同じワープロソフトを紹介するにしても、「ビジネスパーソンに売るため」と「学生に機能を習得させるため」とでは、紹介方法が変わってくるはずだ。「初めてパソコンに触れる中高年齢層に紹介するため」であれば、さらに説明方法はまったく変わるだろう。だから、図1のように、ターゲットごとに説明を対応させていくことになる。これこそを「最適化」と呼ぶのだ。

画像:図1
図1 顧客のニーズに合わせていない、ひととおりの説明では、満足率が低くなる。それぞれのニーズにあった商品特徴から説明すれば、満足率は上がる

これまでのSEOは、誰にでも伝わるようなキーワードを選んで、サーチエンジンで順位を上げることしか考えてこなかった。従来のSEOはまったく「顧客不在」だったのだ。これではいくら順位が上がっても成果が出るはずはない。アクセス解析すれば、検索順位が上がれば訪問者の数は確かに増える。しかし、来てほしい人が来ないのでは数がいくら増えても問い合わせや資料請求につながらない。

製品の各特徴が、顧客にとっての解決策となっている。製品開発はそのために機能をラインアップしているのだから、これはごく当たり前のことだ。同じ機能でも、ターゲット顧客によって説明の仕方はまったく変わってくる

先のポテトチップスの例でいえば、個人客しか訪れないサイトを作ってしまったら、業務用のパッケージはまったく売れないだろう。業務用パッケージのページを評価させたいのならば、ポテトチップスを出す飲食店の人が訪れなければならない。同じパッケージを家庭で買って、ホームパーティをしたい、と考える人もいるかもしれない。しかし、そうした人は、たまたまサイトを訪れるということは非常に少ない。

それを、従来のSEOでは、「ポテトチップス」というキーワードでサーチエンジンの上位を獲得したい、という、顧客不在の考え方でやっていたから、訪問者だけ増えるが成果が出なかったのだ。顧客の側は、ポテトチップスを探しているのではない。お店で出す食材の効率を上げたいとか、盛り上がるホームパーティをしたい、といった「課題」を解決することを考えているのである。

自社の商品はどんな特徴を持っており、それはどんなことを考えている人に喜ばれるものなのか。そのシーンを考えて提案するという、商売の常識が、これまでのSEOになかっただけなのだ。前出の図1のように、それぞれの顧客を満足させるように考えていくことが不可欠なのだ。

来てほしい顧客を思い出し、リストアップする。

では、実践的にプロセスを解説していこう。まず、図2を全社に配って、各事業部に考えてもらう素地を作ってほしい。

画像:図2
図2 Webサイト訪問者のポートフォリオ

この図は2×2のマトリクスになっている。「どんな人に来てほしいか」「どんな人が訪れているか」の2軸で、これにより訪問者について4つのステータスがあることがわかる。

  1. 来てほしい人が、サイトを訪れている
  2. 来てほしくない人が、サイトを訪れている
  3. 来てほしい人が、サイトを訪れていない
  4. 来てほしくない人が、サイトを訪れていない

(1)が実現していれば“売れるサイト”になるわけだが、実際には残念ながら(2)の「別に来てほしいと思わないような人がたくさんやってきている」のだ。そして本当に考えなければならないのは(3)である。「来てほしい」と思う人が、まだまだサイトを訪れていない状態だ。来てほしい人を選んで、来てもらえるようにするのがSEOなのだ。

Web担当者は各事業部・商品担当に前出の図2を配って、

問題は、来てほしい人が来ていないということなんです。あわててキーワードを選ぼうとしないで、どんな人に来てほしいかを考えましょう

と伝え、ふだんどんな人に対してどんな提案を行っているか、思い出してもらおう。

  • どんな種類の顧客にどんな説明をして喜ばれているか?
  • どんな商品どんな顧客に評価されているか?

これを丹念にリストアップしていこう。このリストのなかにこそ、利用シーン、商品が選ばれる理由が含まれている。

たとえば、業務の効率化を助けるソフトウェアパッケージを売っているとしよう。総務部にとっては業務が楽になり、コストダウンにもつながる。人事部にも役立つし、営業部にとっても役立つものだが、それぞれにとっての役立ち方は違うものとなるはずだ。同じ商品特徴で、このように何種類もの顧客の役に立つ。これをきちんとリストアップしていこう。

  • 総務部の人に、どう紹介すれば喜ばれるか?
  • 人事部に、どう伝えればわかってもらえるか?
  • 営業部に、どう言えば「ほしい」と思ってもらえるか?

こんなことは、普通のビジネスの考え方であって、あまりにも常識的。言われなくてもそんなことわかっているよ、という声が聞こえてくる。

しかし、Webというと、みんなそれを忘れてしまい、1つの商品をひととおりにしか紹介しないものだ。それぞれの種類の訪問者をサイトに招く努力を忘れて、「誰でもいいからトップページにたくさん人を集めよう」と考えてしまうのだ。

SEOと言うと、顧客の顔を思い浮かべることもなく、誰でも重要と思うキーワードを少数選んで、それで検索順位を上げれば終わり、と実践に入ってしまう。これではブルー・オーシャン、つまり「自社商品を評価しやすいニーズを持った人に向かって、のびのびと商品提案して、狙いどおり高い評価を受けるというビジネス展開」をできるはずがないのだ。

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実際に訪れている訪問者とのギャップを見つけ出す

実際に訪れている訪問者とのギャップを見つけ出す

来てほしい顧客を思い出すことができれば、ブルー・オーシャンはすぐ近くにある。そのリストのなかに、商品提案方法が書かれているのだから、そこからキーワードを拾えばよいのである。

では、次のステップに移ろう。アクセス解析結果から、キーワードのリストをプリントアウトして、各事業部担当者に配布しよう。キーワードは1つのWebには数百から数万ものバリエーションがあるのが普通だが、まずは上位300ぐらいのリストをプリントアウトしよう。この「現在実際にサイトを訪れているキーワード」のリストを、先につくった「来てほしい顧客」のリストを付き合わせて各担当者に見てもらおう。

このキーワードのリストを見て、それぞれの担当商品を選んでくれそうな人が検索していると思えるキーワードを選んでください。

と頼むのだ。

キーワードが見つかれば、「来てほしい顧客」のリストに書き添えていってもらおう。

先のソフトウェアの例で言えば、「経費節減」というキーワードは総務部の社員が使っているのかもしれない。見つけたらリストの「総務部の社員」というそばに抜き書きする。

  • 総務部の社員
    「経費節減」(25回)
    「省力化」 (12回)

といったリストが完成するはずだ。右端の数字は、現在のサイトに訪れている回数である。

サイトを訪れているキーワードを多い順番に並べて、その回数を折れ線グラフにすると、図3のようになる。つまりロングテールの曲線である。

画像:図3
図3 検索訪問者が描く「ロングテール曲線」

訪問回数が一番多いキーワードを100とすれば、100番目のキーワードが1になる。トップのキーワードが会社名で10,000回訪れているとすれば、100番目のキーワードは100回程度訪れているはずだ。折れ線グラフの左側の急角度に回数が下がっていく部分は、おおむね10個ぐらいのキーワードとなっているはずだ。大半のWebサイトでこのようになっている。

上位300位ぐらいのリストを見れば、かなり少ない訪問回数のキーワードが見つかるはずだ。また、実際の作業時間としても、300ぐらいのキーワードリストであれば、集中して見れば、10分ほどで読み終えることができるだろう。この「来てほしい顧客」と「今訪れているキーワードと回数」を付き合わせるという作業を行えば、「いかに今のサイトに、来てほしい顧客が訪れていないか」を身にしみて感じることができるだろう。

アクセス解析からサイト改善に結び付けるには、サイトを訪れている人のことばかり考えていてはいけない。前出の図2で見たように、来てほしいのに来ていない人を見つけ出すことが重要なのだ。このステップで進めていけば、各商品の特徴に合致するニーズを持った訪問者を集めるには、

  • どんなキーワードを増やさなければならないか?
  • そのためにはどんなコンテンツが必要か?

ということが自然に見えてくるだろう。これこそがロングテール型SEOで成果を出すための、対策対象キーワードなのだ。ここまでのプロセスは、できるだけそれぞれの商品にフィットするように、ということで、全部の事業部を巻き込んで行うように書いてきた。が、会社によっては各事業部の商品担当を全部集めて作業を行うのが難しい場合もあるだろう。その場合にはWeb担当者がやることになる。1人で全商品分の作業をするのはあまりにも大変だから、順番に各事業部にヒアリングするなどして、助けてもらうようにしよう。

リストができたら調査でライバル比較

キーワードリストができたら、対策の優先順位を決めるステップに移る。全事業部のキーワードを考えると、非常にたくさんのキーワードが候補になるので、どれから対策を行えば効率的か、考えるのは大変である。まずは順番にサーチエンジンで検索することだ。「検索オプション」を使えば、ヤフーでもグーグルでも一度に100位まで表示できる。1〜100位までの検索結果をコピーして、エクセルに貼り付けていこう。

ライバルサイトと自社がそれぞれ何位になっているか、どんなページが紹介されているかを見ていけば、次のようなキーワードの状態が見えてくる。

  1. ライバルが強くて自社が弱い
  2. 自社が強くてライバルが弱い
  3. ライバルも自社も強い
  4. ライバルも自社も弱い

(2)の状態が多ければ非常に良い状態といえる。多くの場合、(1)ライバルが強いものを急いで順位を上げたい、ということになる。ただ、これはレッド・オーシャン的で、コストや時間がかかりやすい。(4)の「ライバルも自社も弱い」というキーワードで順位を上げるのは比較的簡単で、効果を独占できるチャンスがある。こうした検討を行えば、キーワードの優先順位を決めやすいだろう。

また、グーグルやオーバーチュアが提供している「キーワードツール」などを使えば、検索回数が多いかどうか、ある程度目星が付けられる。ロングテールワードはもともとあまり検索回数は多くないが、そのなかでも検索回数が比較的多いところから対策を行っていけば、コンバージョン率が高くなりやすいことから、期待値は高い。

アクセス解析が詳細に行える環境があれば、資料請求や問い合わせなどのゴールページに到達した人がどんなキーワードを使っていたかを調べよう。半分ぐらいが会社名で検索して訪れているということが多いが、問題は残りの半分だ。さまざまなキーワードのなかに、「地名が多い」などの傾向を見つけていこう。できあがったキーワードリストにそうした傾向の言葉が含まれていれば、SEO対策の優先順位が高いキーワードと言えるだろう。


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